創立55周年記念特別鼎談
プロデューサー
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古沢
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初めてのプロデューサーとやるときって、情報集めたりします?
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山本
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プロデューサーは脚本を読めるじゃないですか。出来上がった作品じゃなくて、脚本そのものを読めるから、脚本家がどういう仕事ができるか、だいたい分かりますよね。
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古沢
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うん、そうですね。
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山本
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だけど、番組を見ても、その方がどう関わっているか、こちらはよく分からない。何人かいるプロデューサーの中で、どの方が本作りを担ってるのかとかが分からないんで。結局、事前リサーチはできないですよね。ある程度「あっ、こういう番組作ってらっしゃるんだ」と思っても、現場には関わってない場合だってありますし。結局は実際にやってみるまで分からないです。
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鎌田
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プロデューサーとは企画の段階から長く付き合ってるから、ぼくにとっては一番大切な存在です。
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山本
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大河のような歴史ものだと、歴史観を共有できるかどうかも大切で。これは共有できてるだろうと思っていたことが、実はできていなかったりして。制作サイドの人たちも、ずっと歴史ものばかりを作っているわけではないので、そんなに詳しくないこともあるんですよ。なぜか最近は、歴史知らない人のほうがいいみたいなことを、ちょっと言われがちなんです。その方がドラマとして飛躍できる、みたいな。でも、ある程度歴史観を持ってないと、人間を描けない。やっぱり現代とは違うわけですから。今まで学校で習ってきた歴史とは全然違う新しい研究が進んでいるのを、ドラマにどう取り入れるのかとか、そこも合わせないと難しいですし。
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金谷
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歴史って、次々新しい資料が出てくるたびに、変わってきますものね。
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鎌田
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大河をやってたとき、何度もドラマ化されてる題材だから、どうやれば新鮮なものになるだろうと、ずっと悩んでいたときに、友人が一冊の歴史書を持ってきてくれて、あの時代の百姓を新しい史観で書いたものだった。戦国の農民は、虐げられた弱い存在ではなく、もっとしたたかな人間たちで、百姓というのは、百の姓、当時生まれてきたさまざまな商売を示すもので、農民だけを指すものではなかった。ぼくは、この本を何冊か買って、最初の打ち合わせのときに、みんなに渡した。結構、売れていた本なんだけど、時代考証の方も全然知らなくて、その本の史観で書いた一回目の箇所は映像になった時には全部切られていた。この著者の師に当たるのが、網野善彦で、今、中世史は、網野さんのものが定番になっている。片鱗が、ドラマが進んだときにかろうじて残っていて、大学の先生に「さすがNHKだ。新しい史観に対応している」と、コラムで褒めてもらった(笑)。
テレビドラマとネット配信
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金谷
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ご存じのようにコロナの自粛期間中、Netflixの加入者がどんと増えたそうです。こういう時代だからこそ、ドラマの持つ力っていうものも再認識されたのかなっていう気はするんですが、今後、コロナ以降のドラマって、ドラマの持つ力って、何か変わるでしょうか?
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山本
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今、テレビをどうするかっていうのは、やっぱりすごい課題だと思うんです。
私たちのころは、例えば『男女7人夏物語』の来週の続きを見なければ絶対に死ねないっていうぐらい、続きが待ち遠しかったけど、今はネットで一気見してしまうでしょ。
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鎌田
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そうだね、一気見。
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山本
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子どものときから、配信で一気見するので、コロナの影響でというよりも、そういう習慣になっていて、そこはすごく変わっていくだろうなと思います。今、テレビドラマをどうやって若い人たちに見て貰うかが、大きな課題になっていますよね。若い人が見ていないとスポンサーがつかないとか事情もあるんでしょうけど。私が知る限り、若い人たちはほんとにテレビを見ていないし、そもそも持ってない。
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鎌田
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持ってないよね、テレビを。
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山本
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今のF3の人たちは、鎌田先生がお書きになったものなど、勢いがあった時代のドラマを見て育っているから、ドラマに厳しいというか、見る目がある人が多いと思うんですよ。その人たちは、今もずっとテレビドラマを見てくれているので、そこはないがしろにしてはいけないんじゃないかと。あんまり若い層に絞り過ぎるのは、魚がいないところに釣り糸を垂らすようなもので、ちょっと危ないんじゃないかなと思ってます。
理想論かもしれないですけど、テレビとネット配信がもっとうまく役割分担して連携する道みたいなのが、この先できてくるんじゃないかな。『八重の桜』がParaviに入っているんですよ。ParaviってTBSとテレビ東京とWOWOWが主体になったネット配信サービスですよね。NHKの作品を民放局で再放送してくれているような感じで、ちょっと不思議な気がして。でも、感想とか見てると、NHKを見ない層ってかなり沢山いるんですが、その人たちが、綾瀬はるかさんや綾野剛さんが出てるので初めて大河を見ましたというような書き込みをしているんです。普段はNHKも大河も見ない人たちが、こうやってネットで出会うということもあるんですね。
日本と世界
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金谷
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今、ネットの話が出ましたけれど、日本のドラマも世界に出ていく時代になって、特にアニメはすでに世界中で人気ですし、そうした中で、何か期するものはありますか?
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山本
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古沢さん、もうやってらっしゃいますよね、Netflixオリジナル作品を。
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古沢
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はい。でもやっぱり、Netflixで日本のドラマ見てる日本人って、どれぐらいいるだろうという気もするんです。やっぱりアメリカや韓国のドラマを見てる人が多いのだろうと思いますから、その中で日本のドラマが一番面白いって思ってもらいたい。
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鎌田
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ぼくらの時は、デートで行ったのは洋画だったけど、今は邦画見てるんじゃないかな。アニメとか。
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古沢
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そうですね。
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山本
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ネット配信オリジナル作品で、通常の仕事との違いってありましたか。
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古沢
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やっぱ買い取りが基本になるということですね。
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金谷
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そうなんですよね、そこなんです。
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鎌田
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ネット配信は外国の資本が噛んでくるから難しいよね。しっかりとした契約を結ぶためにも、連盟は力にならないといけないと思っています。
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金谷
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先程、買い取りの話が出ましたが、連盟にも、配信ドラマしか書いてないけれど加入できますか、というお電話をいただくことがあるんです。基本的に連盟に入るには、信託していただける著作物がないと難しいんですよね。だからそういった問題なんかも、これから連盟は考えていかなきゃいけない。
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山本
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配信、若い人たちがあんなにいっぱい書いていても、連盟に入れないんですか。
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金谷
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そうなんです、信託できる著作物がないと。
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鎌田
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そうか、著作権がないから。
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金谷
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やはりNetflixとかAmazonとも、今までNHKや民放連とやったように交渉を重ねて、権利を獲得していくような道を作っていくしかないってことですね。
ですからこの先も、当然配信ドラマのご依頼もあるかと思いますが、そのときはぜひ連盟にまずはご相談くださいませ。